2009年12月27日日曜日

伝説の外資トップが説くリーダーの教科書



いわゆるノウハウ本というよりも、管理職とその予備軍に対して、心構えや持つべき認識、果たすべき役割を、56個のLessonとして記している。斬新な内容があるわけではないが、それだけに普遍的であるとも言えるし、何度も読み返して反芻すべき内容だと思う。

ひとつ面白いのは、リーダーとマネージャの違い。違いというより、リーダー=マネージャ+αと定義されている。リーダーの特質として
 ・目指す方向性が語れる(理念、目標、戦略)
 ・リスクをとって「革新」にも挑める(創造的破壊)
 ・関心の対象は「モノ」や「コト」よりも「ヒト」(インスパイア)
 ・短期に加え、「長期」で考える
 ・「権力」ではなく、「権威」でヒトを動かす(人望)
と挙げており、より上位の管理職になるに従い、リーダー的特質を備えることが求められるというメッセージなのだろう。



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以下は気になった点のメモ

・ビジネス人生は、自分の思ったとおりにいくことよりも、うまくいかないことの方が多い。3勝7敗もすれば十分。

・逆境こそ、会社を、人を伸ばす。難しいところから逃げてしまうか、はたまた挑んでみるか。ここで難しいからこそ、やる価値があるのだと気づいた会社や人だけが、大きく伸びるのだ。

・伸びる人は「自責」の人。

・願望で成功した人はいない。願望を目標に変換する。目標=願望+時限設定+行動計画

・上司に求められるのは「人気」ではなく「人望」である。人望には尊敬と信頼という要素が含まれている。「また、あの人と一緒に仕事がしたい」「あの人のあとについていきたい」と思われるかどうか。

・厳しい上司=他人に厳しいと同時に、自分にも厳しい人。

・上司と部下の理想の関係は、畏怖。畏敬の畏と恐怖の怖。

・上司の意味・役割=人を通じ、部下を通じて、いままでよりも大きな、世のため人のために役立つ仕事をすること。

・部下=自分自身と仕事の価値を高めるためのかけがえのない大事な存在

・正しい権限委譲とは、「中間報告を受ける」と事前に取り決め、「ヒントを与える」こと。

・部下を任せようか、任せまいかで迷った時は、任せすぎサイドで失敗すべき。人が育つから。

・社長としての評価は、業績50点、後継者育成50点。

・成功の手柄は部下のもの。責任は上司のもの。

・組織の上に立つリーダーには「才」ばかりではなく、「徳」が求められる。

・カリスマ性とは「つくるもの」ではなく「あるもの」。スキルとだけでなくマインドも必要。

・ビジネスに関する「有用の学」だけでなく、哲学や古典、もっと言えばビジネス書には載っていない「無用の学」を勉強することで、人間の味わいや膨らみは大きく変わってくる。

・眼に「光」があるか。人生観や心、哲学や考え方が表面に出てくる。

・どんなに表面的には態度を取り繕ったとしても、覆い隠すことができないのが、眼の光であり、顔つき、表情、姿勢や身体全体が顔しだす雰囲気なのである。

2009年12月12日土曜日

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと



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以下は気になった点のメモ

■本書のポイント
・バランスをとろうとするな、アンバランスをめざせ。
 すぐれたマネジャーとリーダーは、この一点に集中する。 

・すぐれたマネジャーは「部下ひとりの個性」に注目する。
 部下を型にはめて作りかえようとするのではなく、それぞれの個性を生かせるように、彼らの役割や責任のほうを作りかえる。 

・すぐれたリーダーは「部下たちに共通する不安」に注目する。
 いまそこに向かっているのかを明確にすることで、皆が抱く未来への不安を取り除く。顧客は誰か、強みは何か、尺度は何か、いますぐとれる行動は何かを明らかにすることだけに専念する。 

・そして、継続的な成功を手にする人たちは「何をしないか」に注目する。
 成功することで新たに生じる障害物、退屈な役割やストレス、あなたを消耗させる機会を見逃さない。自分がしたくないことに気付いたら、できるかぎりそれらを切り離す。




■マネジャーとリーダーの違い
・マネジャーの出発点は部下一人ひとりだ。マネジャーは部下の才能、スキル、知識、経験、目標といった要素を観察し、それをもちいて彼らがそれぞれ成功できる将来計画を立てる。マネジャーは部下一人ひとりの成功に専念する。

・リーダーの出発点は、自分が描く未来のイメージだ。よりよい未来こそ、リーダーが語り、反芻し、計画し、練り上げるものだ。このイメージが頭のなかではっきりしたかたちをとって初めて、リーダーはまわりの人々を説得すること(私が思い描く未来で、あなたも成功できる)に関心を向ける。しかしそういった活動のすべてを通じて、リーダーが専念するのは未来である。

2009年11月21日土曜日

即戦力の人心術―部下を持つすべての人に役立つ



アメリカ海軍一番下のダメ軍艦と言われていた誘導ミサイル駆逐艦ベンフォルドの艦長を務めた筆者が、どのようにして改革し、全米一に立て直したのか。その事例紹介を通じて、人心掌握術と問題発見の視点を解説している本。

部下をリソースではなく、個々の人間として接し、相手を理解し、やる気を引き出し、意見を尊重し、信頼し、仕事を任せていく。部下を守るため自分の保身を捨て、上司に提案し成果を勝ち取る。自ら考え実践していく人材へ成長させるために機会を創っていく。それらの具体例が載っている。

訳者の解説にもあったが、職場を「オープン」で「フェア」にし、全員が参画し納得した上で行動に移す環境にするのがポイントで、指示待ちではなく、ひとりひとりが 自分で考えて仕事をしていく力を身につけるため、分析力、判断力、常識力をどう養っていくか。そして仕事で全力をだしきるためには、そのための準備が必要で、体力だけでなく、やる気・気力・意欲をリフレッシュさせ、能力をどうやって高めていくか。それは休息ではなく、遊びが重要である、というのは参考になった。

2009年4月8日水曜日

MBA流交渉術の基本



どうも交渉術と聞くと、手練手管で人を騙すような響きもあって、あまり重要視していなかったのだが、最近、社内各部署に対し、仕事を割り振る役割が多くなり、どうやって主体性を持って取り組んでもらうかが課題だと感じている。特に、従来から決まっている役割以上のことを拒否する雰囲気が蔓延している組織が大半なので、ただ単に依頼するだけでは何も動かないのが現実。また、以前のプロジェクトでベンチャー企業と協業に向けた交渉を色々やってきたが、失敗に終わってしまった苦い経験もあり、 またチャンスを掴んだら、次こそは成功したいと考えていた。

ビジネススクールで体系的に教えていると知り、まずは基本をおさえる意味で読んでみようと手に取った。

・本書で扱う「交渉術」とは、いかにして相手を説得したり恫喝して自分の都合のよい合意をとりつけるかというテクニックのことをさすのではない。本書は「交 渉」というものを一種のゲームとして構造的にとらえ、それを理解したうえで、交渉相手との間でみずからの目的を最大限達成するための合理的アプローチを示 すものである。

・交渉とは二者または三者以上が、ある一つあるいは二つ以上の問題で合意に到達するための科学と芸術であり、それは当事者間の「情報交換とコミュニケーションのプロセス」である。

・交渉の目的は、すべての当事者が可能な最大の共同利得を達成することである。

・「MBAの交渉術」とは、企業間で繰り広げられるビジネス交渉を対象としており、じつはこうした組織間の対外交渉と組織内の内部交渉の複雑な絡み合いの中で、いかにして企業にとって最良の交渉結果にたどり着くべきかという課題に帰着するのだ。






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以下は気になった点のメモ

■交渉のパターン
 ・パイの分割型交渉(ゼロサム交渉)
 ・利益の交換型交渉
 ・利益創出型交渉
  交渉の過程で交渉者同士が協力して対象となっているパイ、つまり分け合うべき交渉条件の価値をのものを拡大するような交渉

利益創出型交渉において、当然重要なのは、交渉者同士が対立して分け前を主張することではなく、いかにすれば全体のパイを拡大できるかという観点からおたがいに協力することである。相手の立場や強み、弱みを理解し、自分が貢献できること、できないことを確認しながら、共通の利害を 認識し、共通の利益を最大化することで、はじめて利益創出型交渉は成立する。(中略)ビジネス交渉の醍醐味は、このような利益創出型交渉を交渉者同士でいかに構築し、当初期待された利益をどこまで拡大してお互いの利益を最大化し、Win-Winの交渉結果をもたらすかということにある。

■交渉力の源泉
 ・時間制約(維持コスト)
 ・非対称な立場
 ・情報非対称性

■交渉のステップ
 1.交渉の準備
   ・自分の交渉目標を設定する
   ・自分のBATNA(他の最良の選択肢を設定する
    (Best Alternative to Negotiated Agreement)
   ・相手の強み・弱みを徹底的に調べる
   ・相手の交渉目標を想定する
   ・相手のBATNAを想定する

 2.交渉の開始
   ・交渉を相手に提案する
   ・相手にアポをとり、交渉を設定する
   ・相手が関心を持っているか確認する
   ・自社とビジネスの概要を紹介する
   ・交渉の目的と想定されるメリットを説明する

 3.交渉の実行
   ・相手の情報を可能なかぎり引き出す
   ・交渉前に想定した相手ポジションを検証する
   ・組み立てた交渉のシナリオを再検討する
   ・交渉相手との人間関係を構築する
   ・ファーストビッド(土台となる提案)をする
     メリット:
      ・相手の反応を見ることで本音を引き出せる
      ・交渉の枠組みを支配できる
     デメリット:
      ・手の内を相手にさらけ出してしまう
      ・準備のために労力やコストがかかる

 4.合意の形成
   ・交渉内容を細分化する
   ・合意できる項目を積み上げる
   ・トップ交渉をアレンジする
   ・ほぼ条件をそろえた状態で決着へ持ち込む

 5.合意の実施
   ・最終契約書をまとめる
   ・契約書にサインする
   ・合意内容が社の合意を得られるよう根回しする
   ・それぞれの会社が内容について批准する
   ・最終合意をするまでに批准手続きを完了する

■交渉戦略のポイント
・プロセスをみずからリードする
  問題提起、争点の整理、合意条件の提案、解決策の提案をすることによって、交渉をリードし、優位に交渉を進めることができる

・積極的に情報開示する
  win-winの合意を目指しているというメッセージを相手に送り、みずから情報を開示することによって、相手も開示することが期待できる

・契約書のドラフトを作成する
  契約書のドラフトは、書かれたこと、書かれていないことのどちらも重要。そのデザインをみずからすることによって、交渉の主導権を握ることができる。


「日本のメーカが子会社を米国企業に売却する」という設定のケーススタディは、いきなり相手先に単独で訪問して失敗。その後、どうやって立て直すなど、意外と有意義だった。エピローグで「交渉とは、結局は人間が人間と対峙して行うアート(芸術)であるという言葉があるが、実際そのとおりというのが、さまざまなビジネス交渉を通じての筆者の実感である。」との記述もあった。最終的にはそうなのだろう。そこに至るまでにはまだまだ遠いが。

2009年3月15日日曜日

「上司」という仕事のつとめ方



「完璧なリーダーシップなんてありません!」とタイトルに掲げられ、また「はじめに」には、「巷にあふれる上司が手にする本は、(中略)、最終的には『もっと強くなれ、もっと有能になれ』とばかりに、上司としての完璧さを求めるようなものばかりです。」と記してある。





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以下は、気になった点のメモ

・リーダーシップとは「未来」を見せる力、マネジメントとは「今」を円滑に動かす力

・リーダーシップとは「人間的な魅力」で人を動かすこと、マネジメントとは、会社の「ルール」に則って人を動かすこと

・マネジメントは管理しやすい状態へと職場を進化させ維持すること

・マネジメントは「制度」「ルール」をもとにして人を動かし、リーダーシップはルールに縛られず、ルールを超えていくもの

・部下からの批判は、上司にとっての「勲章」。批判はあなたが何かをしたことの「証」。何もしていない人は、批判すらない

・「愛の反対語は、「憎しみ」ではなく「無関心」

・部下に尽くすという「リーダーシップ」。上の地位にある者が、第一線に指示をして仕事の仕方を変えさせるのではなく、第一線がやりやすいように仕事の環境を整え、彼らの自主的な改善を後押しする。サーバント・リーダーシップ。

・「部下は、力をもっている。”力がないからつけてやる”のではなく、”部下のもてる力を解放する”のだ」

・雄弁であるより、上司は「黙る力」をもつ(傾聴力)

・上司が体験すべき苦しさとは、部下に仕事を任せ、自分は手出しをせず、「結果を待つ」という生産的な苦しさ

・「矛盾」とは、新たなものを創造する大きな「力」

・強さとは「固い」ことではなく、右に左に揺れる「しなやかさ」

・恐れるべきは失敗ではなく、挑戦しなくなること

・「平等」と「公平」は違う

・心が疲れるとは、心が柔軟性を失い、固くなっていくこと

・挫折や逆境のなかでしか、つかめないものがある

・弱い犬ほどよく吠える

・言葉が言霊になる。アナログな部分を大切にする「時代遅れな上司」ほど部下をうまくまとめあげ、成果を出す

・社員の価値を完璧に評価できる人事制度はない。あるのは、社員の価値を完璧に評価しようと努力する制度だけ

・怒りは、自分の正当性を証明するために使われることがある。実は、心の底で助けを求めているのかもしれない