2008年12月14日日曜日
こんな幹部は辞表を書け
初版は1968年。2006年に新版として刊行されたもののようだが、40年の時を経ても古くささを感じず、今でも充分に有益な内容に富んでいると思う。
マネージャに必要な資質として、著者は以下の7つを挙げている。
・目標指向力(自分に荷物を負わせられるか)
・方法発見能力(困って困って困り抜け)
・組織能力(部下が"困る”ところを探せ)
・伝達能力(即座に、こまめに、全部の個所に)
・動機づけ能力(部下を不完全燃焼させるな)
・育成能力(どれだけの根気があるか)
・自己革新能力(自分を伸ばすのは自分しかいない)
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以下は気になった点のメモ
■幹部のタイプ・定義
最初は、幹部のタイプを3つ挙げている。
第1G:毎日の仕事に追われ、その仕事に追いつけないでフーフー言っている人たち
第2G:仕事に追いついてはいるが、自分の力を賭けて達成しようという自主的な目標がない人々
第3G:自分で自分の部門の問題点をつかみ出し、「いつまでに」、「どんな状態に」もっていこうと決心をして、その目標の達成を追求している人
もちろん、第3Gであるべきだというのが主張であり、「人から指図されて動く人ではなく、自分の担当の問題をつかみ、歴任する一つひとつのポストで何事かを成し遂げていく人」と幹部を定義している。
■幹部の資質
「問題」は創るもの、という節で紹介されていた幹部選別法は興味深い。マネージャ全員にあるひとつの質問を発するだけだという。「きみの担当分野で、どんな解決すべき問題があるか」。この質問に対する反応によって、相手がどれくらいの問題意識を持っているのか確かめるため、という。
[落第]
・返答に窮する者
・自分の担当分野の問題を言わず、とうとうと会社全体の問題を述べる者
・自分の部門について話すのだが、それが非常に抽象的なもの
[合格]
・問題を明確に具体的に述べた者、あるいはその原因は背景を的確に指摘したもの
○その問題に対する対策や目標に関し、明快な解決の構想がみてとれた者
◎さらに、当面の問題と目標、2~3年たったら必ず起こると考えねばならない問題を述べた者
■”できない”で省略されているもの
・「今までの方法では」できない→今までと違う方法を探せばよい
・「今すぐには」できない=今すぐ100点は取れない→すぐ着手して他社との差を開く
・「自分一人では」できない→誰の力を使ったらできるかを考える
■塩漬けと能力飽和
・あまりにも専門家すぎると、他人を使って仕事をするには不向きとレッテル。ベテランで頭が固くなり、何でも自分の思い通りに運ばないと気が済まないようになってしまった
・マネージャの保身により、異動を頑強に反対したことも原因
・能力向上曲線飽和後の放置により、自信過剰になり、変化への勇気を失い、「殺される」
■部下の仕事を応援する
・部下を窮地に追いやらないように、バックアップする
・一番大きなところと、一番小さなところの両方をしっかりつかみ、真ん中は部下に任せて思う存分やらせる
・「彼がこれをやるとしたら、いったい先で何が起きるか」を見通し、先手を打つ
・仕事のなかの最も難しい部分、最も嫌な部分をひっかぶり、みんなの先頭に立って突破口を開く
■第一線の実情が分からない中で決断する方法
・とにかく一度みんなはねつけ、再び持ち出してくるかどうかで、本気度を判断
・細かい質問を浴びせ、徹底的に研究したのか、本当に真剣に考え抜いた上での提案か見抜く
・あらゆる角度から比較検討されたかどうか確かめる
■忙しく見えては落第
・部下がコミュニケーションを遠慮しないようにするための手段
・常に悠迫らざる態度で、余裕たっぷりに見せる
■玉を磨く
・常に未経験の分野や、いままで考えなかったような高い目標にアタックさせる
・部下に力をつけるのには、短気は絶対に禁物
・原則として目標だけを与え黙って見守っている、ギリギリまで待つ、何とか自力で成し遂げられるように援助する
・やむを得ず自分が直接収集する羽目にに陥ると、部下に挫折感を与えてしまう
■成長循環路線
①まず、絶えず未経験の問題にぶつかり、
②これを回避せずに正面から取り組み、
③これを曲がりなりに達成し、あるいは事態を切り抜け、
④これによって、達成の喜びとともに自信を深め、
⑤さらに未経験の問題に挑む
今でも、6年半続けた仕事を変えようとした判断が果たして正しかったのか迷う時があるが、今までを総括でき、改めて自分の進みたい道を確認でき、また別の分野での「常識」を知り、複数の幹部に仕えて、そのよさ/悪さから、マネジメントの一端を垣間見られたことを考えれば、よかったのだろう。成長曲線も飽和していただろうし、仕事の進め方も惰性になっていたし。
数年経ったときに、以前の上司や関係者から、成長したと言われるよう、今の仕事から最大限学び取りたいと思う。
2008年2月16日土曜日
はじめての課長の教科書
そもそも課長という管理職に期待されている職務とは何なのか。部長との違い、遭遇するであろう事態への対処策などが言及されている。
管理職というのはリーダーたる面とマネージャたる面を併せ持つ存在であるが、経営層は進むべき方向とビジョンを指し示し、組織全体を牽引していくリーダーシップに期待される面が大きく、逆に課長には部下の潜在能力を引き出し成果を挙げるというマネジメントに期待される面が大きいという。
そして扱う部下の特徴が、部長と課長では全く異なるという。部長の部下である課長は、そもそも管理職に登用されるような実力と実績を挙げた人材であり年齢的にも近いことが多い。課長の部下達は新入社員から定年間近なベテランまで年齢的にも幅広く、また実力もモチベーションも全く異なる人材に接する。そして部長の差配は予算の分配が主となるが、課長は部下の育成も心理状態も視野に入れ、より実力を伸ばせる仕事の大きさと難度で、適切にアサインしていくことが求められる。褒め方も叱り方も気を遣い、実力のある部下もやる気のない部下も個別に最適な方法で接していく必要がある。著者は野中郁次郎氏の「ミド ル・アップダウン」というマネジメント手法を引用していたが、課長に求められ、日本企業の競争力の源泉は、この課長に求められる資質だと説いていた。
そしてその課長の成功のカギは「無私」であり、部下の成功を心から喜べるかどうかであるという。そのためには自分が課長止まりであることを覚悟した時に初めて生まれるものだという指摘は、なかなか示唆に富んでいると感じている。
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以下は、気になった点のメモ
・課長は、年齢や能力に大きな幅がある部下を持たなければならない。部下・顧客・上司、3方向に意識を向け、利害を調整するのが課長の仕事である。
・課長は、部下を一人の人間として気に掛け、興味を持ち、熟知することで、部下のモティベーションを高め、成果につなげることができる。
・課長は、部下に徹底的にルーティン・ワークを教え込むことで、例外的な問題や事業機会を発見する仕組みを作り上げなくてはならない。
・課長は「重要な現場情報」を経営に引き上げ、経営ビジョンを現場に浸透させるナレッジ・エンジニアである。
・仕事に没頭する状態 5つの条件
1.目的と価値が明確
2.コントロールできる
3.適切な難易度
4.邪魔が入らない
5.成功の基準明確
・課長の8つの基本スキル
1.部下を守り安心させる
2.部下をほめ方向性を明確に伝える
3.部下を叱り変化をうながす
4.現場を観察し次を予測する
5.ストレスを適度な状態に管理する
6.部下をコーチングし答えを引き出す
7.楽しく没頭できるように仕事をアレンジする
8.オフサイト・ミーティングでチームの結束を高める
・基本的に人間が3人以上集まっている集団において、政治が発生しないなんてことはない。子供の間にだって政治は存在するのだから、大人の社会が政治的になるのは当然。
・社内政治とは、利害が「限られた昇進ポストと予算」で対立する、複数の勢力による「権力争い、政争」である
・社内政治のルール
1.社内のキーマンを知り、その権力範囲を知る
※キーマン=オフィシャルには決定権の及ばない数多くの議題に対し、影響力を発揮することに長けている人
2.自分がキーマンにとって有用な人材になる
※彼らのことを気に掛け、望みを理解し、その評判を高めるような行動を心がけること
3.いたるところで政敵をほめる
4.自分がキーマンになることを目指す
⇒公式、非公式に多くの社内横断的なプロジェクトに献身的につながっていくことがキーマンになるための一番確実な方法
・リーダーシップの本質は、価値観や雇用形態を超えて、周囲の多くの人々から「この人と一緒に仕事をしたい」と思われること
・無私になる=どれだけ多くの仲間を助け、仲間からの信頼を集められたのかを誇れるようになれば、その人物は世界中のどこでも通用する
・仮に無駄だとわかっていても、それでも自社を変える努力をし、社内で改革のリーダーになるべき
・「その場で五感を総動員して取得した情報を、数行の文章に圧縮する能力」。これが重要なことをより多く記憶し、効率的なコミュニケーションをするために必要な能力
管理職というのはリーダーたる面とマネージャたる面を併せ持つ存在であるが、経営層は進むべき方向とビジョンを指し示し、組織全体を牽引していくリーダーシップに期待される面が大きく、逆に課長には部下の潜在能力を引き出し成果を挙げるというマネジメントに期待される面が大きいという。
そして扱う部下の特徴が、部長と課長では全く異なるという。部長の部下である課長は、そもそも管理職に登用されるような実力と実績を挙げた人材であり年齢的にも近いことが多い。課長の部下達は新入社員から定年間近なベテランまで年齢的にも幅広く、また実力もモチベーションも全く異なる人材に接する。そして部長の差配は予算の分配が主となるが、課長は部下の育成も心理状態も視野に入れ、より実力を伸ばせる仕事の大きさと難度で、適切にアサインしていくことが求められる。褒め方も叱り方も気を遣い、実力のある部下もやる気のない部下も個別に最適な方法で接していく必要がある。著者は野中郁次郎氏の「ミド ル・アップダウン」というマネジメント手法を引用していたが、課長に求められ、日本企業の競争力の源泉は、この課長に求められる資質だと説いていた。
そしてその課長の成功のカギは「無私」であり、部下の成功を心から喜べるかどうかであるという。そのためには自分が課長止まりであることを覚悟した時に初めて生まれるものだという指摘は、なかなか示唆に富んでいると感じている。
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以下は、気になった点のメモ
・課長は、年齢や能力に大きな幅がある部下を持たなければならない。部下・顧客・上司、3方向に意識を向け、利害を調整するのが課長の仕事である。
・課長は、部下を一人の人間として気に掛け、興味を持ち、熟知することで、部下のモティベーションを高め、成果につなげることができる。
・課長は、部下に徹底的にルーティン・ワークを教え込むことで、例外的な問題や事業機会を発見する仕組みを作り上げなくてはならない。
・課長は「重要な現場情報」を経営に引き上げ、経営ビジョンを現場に浸透させるナレッジ・エンジニアである。
・仕事に没頭する状態 5つの条件
1.目的と価値が明確
2.コントロールできる
3.適切な難易度
4.邪魔が入らない
5.成功の基準明確
・課長の8つの基本スキル
1.部下を守り安心させる
2.部下をほめ方向性を明確に伝える
3.部下を叱り変化をうながす
4.現場を観察し次を予測する
5.ストレスを適度な状態に管理する
6.部下をコーチングし答えを引き出す
7.楽しく没頭できるように仕事をアレンジする
8.オフサイト・ミーティングでチームの結束を高める
・基本的に人間が3人以上集まっている集団において、政治が発生しないなんてことはない。子供の間にだって政治は存在するのだから、大人の社会が政治的になるのは当然。
・社内政治とは、利害が「限られた昇進ポストと予算」で対立する、複数の勢力による「権力争い、政争」である
・社内政治のルール
1.社内のキーマンを知り、その権力範囲を知る
※キーマン=オフィシャルには決定権の及ばない数多くの議題に対し、影響力を発揮することに長けている人
2.自分がキーマンにとって有用な人材になる
※彼らのことを気に掛け、望みを理解し、その評判を高めるような行動を心がけること
3.いたるところで政敵をほめる
4.自分がキーマンになることを目指す
⇒公式、非公式に多くの社内横断的なプロジェクトに献身的につながっていくことがキーマンになるための一番確実な方法
・リーダーシップの本質は、価値観や雇用形態を超えて、周囲の多くの人々から「この人と一緒に仕事をしたい」と思われること
・無私になる=どれだけ多くの仲間を助け、仲間からの信頼を集められたのかを誇れるようになれば、その人物は世界中のどこでも通用する
・仮に無駄だとわかっていても、それでも自社を変える努力をし、社内で改革のリーダーになるべき
・「その場で五感を総動員して取得した情報を、数行の文章に圧縮する能力」。これが重要なことをより多く記憶し、効率的なコミュニケーションをするために必要な能力
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