2019年2月11日月曜日

人事とは最強の経営戦略


以下はメモ

・グローバル人事とは、事業のグローバル化に伴う以下の人材の変化に対応すること

  人材の多様化

  人材需給のグローバル化

  人材の流動化


・三段階モデル

  セントラル人事(本国、本社の人材を海外でも活躍できるように育成して海外の支社や現地法人に派遣し、主に現地企業との合弁や協業によってマーケットに食い込み、現地のニーズに応えた製品、サービスを提供)

  マルチナショナル人事(現地法人の社員はもちろん、トップにも現地で採用、育成した人財を登用し、必要な権限も委譲し経営のほとんどを現地に任せる)

  インターナショナル人事(国や地域を越え、グローバルに人事施策を行う必要がある場合)


・3つの課題

  経営と人事の一体化 →人材の需給をグローバルで把握

  タレントマネジメント →計画的に人材を育成し事業戦略のブレを人材戦力で埋める

  組織開発・組織活性化 →グローバルで人材を組織として機能


・日本の人事が変えるべき3つのポイント

 結果人事(平等性)→計画人事(リスク管理)

 主観人事(人を評価)→客観人事(仕事を評価)

 密室人事(上司や人事への信頼に頼る)→透明人事(評価の仕組みへの信頼に頼る)

2018年1月19日金曜日

経営の針路



海外事業に携わるようになり約2年。日頃の業務で感じた疑問、研究会等で得た知識・知見がまだバラバラだったのが、本書を読むことで繋がった。

著者は、1990年の冷戦終結により、根本的な経済構造と企業経営が変化し、急速に拡大した企業経営の最前線として以下の3つがあり、それぞれが乗数効果のように関連し影響してきたという。

  • グローバル=世界経済が統合=東西分断が終焉し、旧東欧諸国や中国・アジア諸国、インド、ブラジルの経済発展が開始。新興国ブーム
  • キャピタル=新自由主義の拡大、マネタリズム(金融緩和政策)の台頭、高齢化による年金資金の積み上がり、による金融経済の膨張
  • デジタル=コンピューティングと通信技術(インターネット、無線)の革新、米国の軍縮による民間への先端技術・有能な人材の流出

また、なぜ日本企業が冷戦時代には海外展開で大成功し、新興国への工場建設で先行したのに、新興国市場開拓では後塵を拝しているのか、事業戦略面、組織管理面から述べているが腑に落ちた。冷戦時代の特殊な環境下での成功体験が「日本で受容された良い製品を作れば全世界でも受容される」との勘違いを生み、雇用を重視するが個々人の能力を軽視する、数値管理が過ぎてむしろサイロ化・短期思考に陥っている、現状の延長線上での経営であり、戦略思考に基づく長期経営ではないなど。

また、ちょうどグローバル経営に関心があったので、グローバル経済への対応についての解説は疑問が解け理解が深まった。

  • 新興国の経済発展の加速により巨大な消費市場へと進化したため、自国の需要不足を克服する新たな成長機会
    • 母国や先進国市場とは異なる市場開拓のアプローチが必要
  • 収益目標や管理の仕方を含めた柔軟で機動的な組織運営
    • 異なる文化圏の多様な人材能力を活用するための人事制度の整備や最前線の活動をサポートする兵站機能の確保など、複雑化・巨大化していく事業運営を司るための組織と経営体制が求められる
  • 為替から災害、地政学までのあらゆるリスクを引き受けるため、高度なリスク管理と財務的体力も要求される
  • 新興国での生産拠点化では、立地、行政折衝、物流路の確保、労働者の採用・育成、安定操業の確立などの長大化するサプライチェーンの設計・管理の巧拙が競争力を支配
    • 地場の専門業者に生産委託する方式を採用(台湾、中国における組み立て生産(ホンハイ、TSMC)、インドにおけるソフトウェア開発(タタ、インフォシス))
    • ※ファブレスメーカでの成功例:アップル、クアルコム
  • 経営戦略のポイントは、現地化の追求と標準化・集約化のバランスをどうとるか?標準化・集約化はエンジニアリングだけでなく、バックオフィス業務でも実施。また、地域や国家間の差異を構造的な優位性として自社に戦略的に取り込んで行くことが重要であり、コスト優位性、高度人材の確保、母国の地域優位性だけでなく世界各国に遍在する優位性を自社に取り込む

  • 組織運営も本社支社の縦の関係から、マトリクス組織による収益責任追及と調整要求へ移行してきたが、さらには、マトリクス組織による管理の多層化が縦横の軋轢調整に多大な組織コストを発生させるため、以下の3つへ進化


  1.  組織のオープンアーキテクチャ化
    1. バリューチェーンの特定機能上に自社の優位性を見出し、事業を絞り込む一方、その他の機能を外部委託することで事業を得意領域へ純化し組織をコンパクト化
    2. バックオフィスや管理機能の世界標準化と外部化
  2.  ガバナンスモデルの改革
    1. 人々を管理するのではなく、内的に動機付けすることを主眼とした組織設計(企業理念、行動規範、ミッション、ビジョンを重視)
  3.  組織のフラット化とネットワーク化



  • また、キャピタル経済への対応となるが、グローバル化した資本市場からの企業業績への圧力に対し、株主価値志向の経営を強化するため、効果的なM&A戦略を構想し、的確に遂行する能力が成長戦略に必須の経営手段となる

2016年11月13日日曜日

Mission, Vision, Value, and Talent Management

1ヶ月程前に、グローバル経営に関する研究をする会合に参加させてもらった。

その回のテーマは、「Talent Management」
企業の成長力や競争力の源泉はやはりヒトで、そのポテンシャルを企業として最大限に引き出すことが大事だから経営の仕組み自体にどう組み込むかがポイント。実践していると自称する企業でも、実は「Succession Management」であり似て非なるものであったり、幹部候補の早期選抜であって実践範囲が一部に留まるなど、取り組みに濃淡もある。

先進事例はGEやIBM。
キャリアは自分自身が責任を持ち、企業側はそれを尊重し速く大きく成長したいと考える社員には、ギリギリ達成できるかどうかのストレッチした機会を与える。マネージャの責務として部下の成長があり評価項目になっている。成長を希望するのに18ヶ月以上現職にいる部下がいると、キャリア開発を怠っているのではないかと人事部がマネージャに確認を求める。だからマネージャは部下が成長できそうなポジションに空きがあるかどうか常にアンテナを張っているし、空きが出るとそのポジションの責任者に部下が適任だと売り込むらしい。

そもそも人事部には個々の社員の人事異動や評価昇進は職務範囲外であるし、転居を伴う異動や赴任は本人の同意なくして成立しないという雇用常識が根底にある。そして、最も重要なのは、自社のミッションとビジョンをしっかりと定め、それを実現していくにあたり大事にしたい価値観はどんなものなのかを明確にしておくことだと言う。それに合致した人だけを雇用するし、そこのミスマッチは他の社員にも悪影響だし、そもそも社員のキャリア開発には、そのミッション、ビジョン、バリューと合っているからこそ会社は支援しうると考えている。

確かに、この企業は世の中どう良くしたいのか、そのためにはどんなことに重きを置くのかといった与件の中で、自分はこの環境を活かしてどう成長させたいのか?と考えていかないと、単に報酬や昇進や待遇などの内向きで受け身な雰囲気になってしまうかもしれない。

さて、自社を振り返り、掲げられているミッション、ビジョン、バリューは、腹の底から信じられる使命、実現したい未来、常に自身の行動の拠り所となる価値観だろうか? これが、志を同じくするメンバーで集い立ち向かっていくということなのだろう。